当院での治療について
- 根本的なことですが、手術ができないから鍼灸治療をしているのですか?
例えば「片側椎弓切除術」と呼ばれるような、高度な外科手術を私は行えません。
しかしながら、手術ができないのを理由に鍼灸を選んだのではありません。先に「鍼灸」と出会い、「鍼灸」を施せば全てが治ることを確信したからこそ、今の私がいます。それゆえ、私にはヘルニア治療の外科手術は不要なのです。やや余談になりますが、優秀な外科医でありながら「鍼灸」を少々学んだ獣医師を私は存知あげています。仮にT医師としましょう。このT医師は、外科手術の腕の確かさから「推間板ヘルニア」と呼ばれる病気で近隣の獣医から手術の依頼をうける事が多いようです。
当然、T医師の病院でも一般外来で同様の病気の治療依頼があります。
ところが、T医師の動物病院では、迷わず「鍼灸」を行なうそうです。
バリバリの外科派の獣医師が、メスよりも「鍼」を選ぶ。自分の仔に置き換えてみたら当然ですよね。あなたがもし「手術」もできて「鍼」もできる医師だったとしたら、歩けなくなった我が仔を目の前にして何を迷うことがありますか!- 鍼灸治療を行っている動物病院を探してみるといくつか見つかりますが、他の動物病院との違いはありますか?
人間の鍼灸治療を例に取ると、中国から伝わって日本で完成された日本独自の鍼灸と、中国のオリジナルの鍼灸に大別されます。
当院では、後者の中国鍼の方法による治療を行っております。一般的に、前者の鍼治療はマイルドで緩徐、そして痛みが少ないといった印象が持たれています。じわじわ、ゆっくりと効いてくるということです。
後者の治療は刺激量が多いため、鍼の刺激が苦手でなければ、速やかに効果が得られます。すなわち、即効性です。
この治療を用いると、即効性だけではなく、難聴、耳鳴り、糖尿病、アトピー性皮膚炎および腎不全のような、西洋医学では治療の難しい病気にも画期的な効果をもたらします。肩こり、腰痛だけを治していたのでは、少しもったいないような気がしてしまいます。
人間の難病に効果を発揮する鍼灸は、当然、動物がかかる難病に対しても有効なのです。
当院では、代表的な病気(椎間板ヘルニア・麻痺)の治療はもちろんのこと、前述したような難病を克服するためにも、是非、鍼灸治療を受けていただきたいと考えております。当院で治療を受けなくとも、他の動物病院で鍼灸治療を受ける場合にはまず、
「そちらの病院では、糖尿病の犬を鍼灸で診てもらえますか?インシュリンの注射量を減らしたいんですけど…」とか、
「癲癇(てんかん)なんですが、鍼灸で発作を減らせますか?フェノバルビタール(お薬名)の飲む量を減らしたいんですけど…」
などと尋ねてみてください。糖尿病や癲癇(てんかん)の治療が可能な鍼灸を実践している獣医師ならば、きっとあなたにも良い治療を施してくれることでしょう。
- 入院治療は行っていますか?
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原則的に鍼治療の入院治療は行っておりません。
ただし、一度も手術を受けていない麻痺のわんちゃんにおいて、入院を勧めるケースが極稀にあります。
その症例の仔たちは皆、ステロイド長期投与などの影響で、週1回の通院では早期回復が難しいと予測されるためです。
この場合、入院治療により治療回数を減らすことが可能です。 - 電気治療器具を用いた鍼治療(=通電による鍼)は行っていますか?
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当院では、行っておりません。
「椎間板ヘルニア」という病気で、現在鍼灸治療をお受けになっている方、あるいは、これから新たに受けようと考えている方、機会があれば是非とも二つの治療を見比べてみてください。自ずと答えが出るはずです。機械的に操作する近代的な通電鍼に比べ、「気を操作する」という多分にアナログな要素を含んだ古典的な鍼灸が、いかに高い応用力と治療効果を有していることか!通電鍼ならば100回通院しなければならないところを、10回まで短縮できるかもしれません。手法が通電を用いない鍼治療では、手法がアナログな分、鍼灸師の腕によっても大きな差は生じてしまいますが。
- 検査はしますか?また治療方法はどうやって決定しているのですか?
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通常、検査は行っておりません。
レントゲンを撮影する枚数は、1年間で15枚程度でしょうか。被曝(ひばく)の少ない病院です。特に、椎間板ヘルニアという病気では、多くの動物病院でルーティーンのように画像診断が行われています。
一方、当院ではルーティーンのようにレントゲンを一枚も撮りません。いや、正確に申しあげると、椎間板ヘルニアでは撮ったことがないのです。それでも確実に完治させておりますのでご安心ください。
ヒトにおいてレントゲンや血液検査を実施する鍼灸院が存在するでしょうか?つまり、そういうことです。では、どうやって、治療法を決定するのか。
「四診」という方法を用います。「四診」とは四つの診断法のこと、すなわち「問診」「切診(せっしん)」「望診(ぼうしん)」「聞診(ぶんしん)」のことを指します。
「切診」とは、西洋医学でいう触診のこと。同様に、「望診」は視診、「聞診」は耳や鼻で行う診察を指します。口臭による口内炎の診断は、まさに聞診によるものです。
五官を用いて行う「四診」のうち、多くの鍼灸師は「切診」のうちの「脈診」を特に重要視しています。
治療法は「四診」によって導き出される「証」(体質のようなもの)に合わせて決定します。 - 予防のための鍼治療を行っていますか?
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飼い主さんの継続的な通院治療が困難なため、原則として実施しておりません。
継続できない理由の多くは、飼い主さんの通院が「義務的」になってしまうことにあります。「義務」ではなく「効いているという実感」を、飼い主さんご自身が持続できている状態でないと、継続は非常に困難なものとなってしまいます。
したがいまして、病状が治った時点で鍼灸治療は原則終了となります。 - 薬を飲んでいても、鍼灸治療を受けられますか?
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受けられます。
ただし、お薬の副作用で鍼灸治療の効果がでなければ、それは飼い主さんの責任ということになってしまいます。
私から無理矢理お薬を止めさせるようなことはしませんので、そこは飼い主さんの判断にお任せいたします。 - どのくらいの間隔で治療に通えばよいのですか?
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原則として、当院では1週間に1回の頻度より多くの鍼はしておりません。
しかし、例外があります。
例えば、週1回の通院だと完治までに合計20回の鍼を要する椎間板ヘルニアの治療があったとします。
それが治療の間隔を詰めることにより5回で完治するのであれば、そちらをお勧めしております。自動車学校では、最初から教習の間隔を空けすぎてしまうと運転のコツをつかめません。それと同様に、重病の仔だと治癒力が働かないため、最初の1、2回の鍼治療ではすぐ元に戻ろうとするのです。
ちなみに、当院に入院されたマックスくんは、重度の完全麻痺(来院前の約1ヶ月間麻痺・他の獣医は「もう歩けない」と診断)を最短で完治させるために、毎日の鍼治療を実施しました。効果が得られないままにステロイドの投薬を受けた結果、歩行に対しての副作用が生じたため、実に179日という長期の入院治療を要しました。間隔を詰めて行った鍼灸の成果が、見事に結実しました。
仮に通院で対応した場合は、優に5年(179日×10倍かかる事について≒5年)はかかったでしょう。関連項目:回復過程・ケース2(マックスくん : 椎間板ヘルニア)
関連項目:他の病院で「椎間板ヘルニア」であると告げられましたが、手術で削らなければならないのでしょうか?
- 他の病院で聞きなれない病名を告げられたのですが、これは治るのですか?
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治ります。いや、正確に言うと、すでに治りました。
今年拝見した実際の症例です。 2歳齢のチワワ(♀)が全身の震えを主訴に来院されました。26日間に渡り、寝ているとき以外は小刻みに震え続け、歩くのにも支障が出るほどでした。近所の名うての獣医さんからは「水頭症」と診断され、ステロイドと利尿剤を投与されていました。しかし、その薬が全く効かなかったため、大学の先生にも助けを求めました。その結果、ついた診断名が「突発性ふるえ症候群」 でした。即座に「イヤになっちゃった」そうです(爆笑)。
本症例は、「たった2本の針を用いた」「たった1回の鍼治療で」「翌日には」震えがおさまってしまいました。もし本当に「突発性ふるえ症候群」なる病気が存在したならば、私の鍼治療でも完治は難しかったと言わざるを得ません。
鍼灸の格言に「諸風掉眩、皆肝に属す(しょうふうとうげん、みなかんにぞくす)」というものがあります。外関穴・陽陵泉穴の2穴(ツボ)で治ってしまうということです。もしも初診が当院で、初日に鍼灸を施していたならば、あっさりと治りすぎたがゆえにありがたみは無かったのではないでしょうか。獣医大学の先生によるものも含めた長期治療の甲斐がなかったために、治癒後は大変感謝をされました。実に皮肉なことです。
病気が難しければ難しいほど、あるいは病名が怪しければ怪しいほど、当院の鍼灸治療に向いています。
「まるで魔法のようだ。」これは初めて鍼治療を受けた飼い主さんの感想ですが、そんな魔法のような治療を、苦しんでいるあなたの仔にも受けさせてみませんか?そして、これは1000個くらいある私の座右の銘の一つですが「案ずるより生むが易し」ですよ。
関連項目:「本当に「この仔のため」の治療ですか?」
- 他の病院で「病名を付けることができない」あるいは「病気がわからない」と告げられましたが、それでも治りますか?
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治ります。
このようなケース、または「常識的な」治療で治らない場合は、是非当院にて(飼い主さんにとっての)「非常識的な」治療をお試し下さい。前出の質問のように、大学病院で「突発性ふるえ症候群」なる難病と診断され、「こりゃダメだ」と思い直して当院に来院されたケースもあります。副作用のない薬は、存在しないといっても過言ではないでしょう。そんな薬を使用するのには、「病名」という大義が必要なのです。良くないことをやるには大義が必要である。どこかの国も戦争をしかけるのに「大量破壊兵器が云々…」と言っていたのを記憶しています。
西洋医学の病名治療における、素晴らしい治療法も知っています。
しかしながら、薬を投与するための病名付けでは、本末転倒です。
怪しい病名を耳にしたとき、そして病気に疑問をもったときは、是非、前向きに鍼治療をご検討下さい。 - インフォームドコンセント(IC)を重要視していますか?
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鍼灸には副作用がないので、私はインフォームドコンセント(以下IC)の必要を全く感じておりません。
飼い主さんに求められれば必要に応じて行いますが、鍼灸をICにて理解することは、はっきり申しあげて無理です。理解できない説明に長い時間を浪費することは、あなたの仔にとって利益をもたらしません。本ウェブサイトを隅々までご覧頂ければ、鍼灸を分かった「つもり」にはなっていただけるかと思います。私見ですが、西洋医学で行われているICは、患者のためというよりもむしろ、医師のために重要なものだと考えています。お薬の副作用、術後の後遺症、この手術がどうして難しいか、難しい手術だからこそマイナス面(失敗)があることなど、9割はうまく行かなかったときの説明(=医師の言い訳)です。
ICは「納得医療」と訳されたりもします。あなたは、医師の事前の言い訳(IC)を納得させられようとしているかもしれません。
犬の椎間板ヘルニアに関して「手術は成功したのに歩けないこともある」という世間に蔓延(はびこ)っている説明。成功しても結果的に歩けないという手術を、成功と評価することが、人間医療で許されるでしょうか?病気を治し、かつ副作用のない治療に、説明(IC)は必要ありません。
だって、医者が一言「必ず治ります」と言ったら、他に何か訊きたいことがありますか?関連項目:「本当に「この仔のため」の治療ですか?」