治療に関するQ&A

01東洋医学/鍼灸治療一般について

「病名治療をしない」とはどういう意味ですか?

鍼灸では「病名」が重要ではありません。
診断名がアトピー性皮膚炎でも、AさんとBさんとで証(体質)が違えば、異なる鍼を行います。
アトピー性皮膚炎だから、抗ヒスタミン薬、ステロイド、あるいは抗生物質というわけにはいかないのです。
逆に、病名が全くつけられない難病でも、「証だて(体質の決定)」さえできれば十分に優れた治療を施せるのが鍼灸治療なのです。

鍼を刺されると動物は痛いのですか?

痛くない、と思います。
何故なら、私自身が鍼治療を受けるときに痛いと思わないからです。
しかし、あんなに美味しいハーゲンダッツのアイスを食べても「普通だよ」と答える人がいるように「鍼」についても受けとり方は様々です。元も子もない話ですが、痛いかどうかは実際にわんちゃん・ねこちゃんに訊いてみないと分かりません。
どうしても不安なようであれば、当院での治療風景をご覧ください。きっと不安も取り除かれることでしょう。

余談ですが、私はハーゲンダッツ・クッキー&クリームが大好きです。

関連項目:施術の様子(ラージャくん:予防の為に鍼治療中、主訴なし)

犬/猫/人間で、異なる鍼を用いるのですか?

鍼方(鍼の方法)も使用する器具も同じです。
特に鍼方は人間にも通用するものでないと良い治療はできません。唯一の違いは、わんちゃん・ねこちゃんは仰向けになってくれないことが多いので、大部分は陽経の経穴(体の外側にあるツボ)に針を刺すことになります。

即効性はありますか?

非常に即効性があります。
私の場合、のどの痛みで鍼治療を施してもらったとき、合谷穴(ツボの名前)に刺鍼(ししん)してもらった3秒後にはのどの痛みがとれていました。恐るべき効果です。当院に来院される方の95%は、一回目の治療で即効性を感じて下さっています。

最近のパグの症例では、結果を出すまでに5回の鍼灸を要しました。よって「何回くらい治療に通えば結果が出るの?」と問われるならば「最低5回は治療に通ってください」とお答えさせていただきます。
「5回目の治療後にはよくなっている」そう信じて治療を続けてください。

巷間で言われているのと同じように、「鍼灸治療はじわじわ効いてくるものです」と、したり顔でお答えすることもできるのですが、それでは、いつわりの鍼灸を世に伝えることになってしまいますね。

鍼は、動物によって効いたり効かなかったりするのですか?

何よりもまず、お答えしなければならないことがあります。
「鍼は効く仔もいるし、効かない仔もいる」といった風説を流しているのは、鍼灸のことを正しく知らない方に多いようです。「鍼灸院で、人間の肝炎が感染(うつ)った」というのと同じレベルのデマであると言えるでしょう。

本題に移りますが、「鍼灸適応症であればすべての仔が鍼で治り、鍼灸適応症でなければどのような優れた鍼を施しても治らない。」これが事実であり、それ以上でもそれ以下でもありません。

例えば、「開放性骨折」あるいは「骨肉腫」という症例では、やはり外科手術が最適と言わざるを得ません。
西洋医学にしても鍼灸にしても、診断が誤っていれば治らないわけで、何よりもまず、鍼灸適応症であるか否かを鍼灸師(獣医)といっしょに確認する必要があります。

鍼治療を施したけれど一向に効いてくる様子がない、そんなときは鍼灸師の技量の問題も考えに入れてください。鍼灸師なら誰でも良いわけではないのです。
とは言え、「1回目の鍼治療を施された後でまったく効果を感じない」という問題に出くわしたとき、その原因が鍼治療1回ではびくともしないほどの病気自体にあるのか、それとも鍼灸師の腕の問題なのか、見極めるのは非常に難しいことです。もしかしたらあなたの担当医は「優秀な鍼灸師ならば10回の施術で済むところを、20回も施術してしまう鍼灸師」であるかもしれませんが、そのくらいのレベルならば、担当医は変えずに寛容な気持ちで身を委ねた方がよいでしょう。

力量のない鍼灸師を見極めるのによい例として「肩こり・腰痛は治せるけれど、めまい症例や腎機能不全あるいは癲癇(てんかん)などの治療は自信がない」というものが挙げられます。後者の病気は、病名治療を行えないために鍼灸でも難易度の高い病気と思われがちです。

最後に、以下のような話をされている鍼治療の獣医師がいることを耳にしました。
「骨・関節・神経疾患の25%の症例に鍼灸は有効である」と。
言語道断です。
動物の鍼灸医療だけでなく、鍼灸全体の評価を落とし、誤解を招く発言です。
ご自身の鍼灸技量では25%しか結果を出せない、というのが本音ではないでしょうか。

全ての鍼灸適応症は「100%」鍼灸で治ります。
あとは、鍼灸師の腕次第です。

自分の判断で治療をやめても大丈夫ですか?

飼主さんの判断で治療を中止したものの、病気が再発してしまったということを往々にして経験します。
今日が「鍼」の最終日というときは、必ず私の方から「もういらっしゃる必要はありませんよ」と申し上げていますので、
そのときまでは治療をおやめにならない方が賢明です。

当院の方針は「治った時点で治療終了」です。
しかし、治っていく過程で、「義務的に」鍼治療に来院されている方を、時々お見受けします。
「あと何回鍼に行かなければならないのだろう」という「義務感」に支配されているのでしょう。
私のために鍼を受けてもらっても困るので、もう鍼が必要ないと判断された場合は、義務的な通院はやめていただいて結構です。

ちなみに、治療最終日を迎えたとき、真面目な飼い主さんほど決まって「えっ、もう来なくてよいのですか?」と聞き返されます。喜んで治療を受けてくださるとは、そういうものなんですね。

鍼灸治療でアトピー性皮膚炎まで治るのですか?

治ります。

素晴らしい鍼灸師が、ヒトの花粉症を治療していることは(鍼灸師の間では)周知の事実ですが、それはつまり、アレルゲンとなるスギ花粉の有無は、鍼灸治療にとっては関係がないということを意味します。

アトピーもそれと同じ。

体質を改善し、アレルゲンに曝露(ばくろ)されても、アレルギーを起こさない体に作り変えることに意味があるのです。

一般的なアトピーにおいては、大多数のイヌが空気中に浮遊する大量のハウスダストマイトに対する過敏症(アレルギー陽性反応)を持っています。

よって、食事療法(除去食療法:低アレルギー食を与える方法)を実施しても、通常は完治に到りません。

私が、低アレルギー食という姑息な手段を用いず、鍼灸・漢方薬でアトピーを完治させる理由はそこにあるのです。

また、イヌのアトピー性皮膚炎において、アレルギー検査は実施しません。

アレルゲンの特定いかんに関わらず、証(体質)の決定にしたがって鍼治療を実施することになるため、高価なアレルギー検査を実施することは4年くらい前にやめました。

ちなみに、私の飼っているフレンチ・ブルドッグは、アレルギー陽性反応を示すものを食べても、皮膚に影響は出ません。

「動画で見る針治療の様子」でご紹介したラージャくんも、アレルギーのある仔ですが、現在は治っております。

関連項目:施術の様子(ラージャくん:予防の為に鍼治療中、主訴なし)
関連資料:アレルギー検査データ

そもそも、針を刺しただけでどうして病気が治るのですか?

誤解を恐れずにお答えしますが、
「私にも分かりません」
とお答えするのが最も妥当だと思われます。

しかし、詭弁ではないとお断りした上で、「この質問にはいずれ答えなくても良くなるでしょう」ということを申しあげたい。

なぜなら、わんちゃん・ねこちゃんの病気が治ってしまうと、途端に飼い主さんたちは皆「針でどうして病気が治るか」という質問をしなくなってしまうからです。

私は以前より、抗生物質では治らない、耐性菌で侵された褥瘡(=床ずれ)が治るという未知の経験を何度もさせて頂いております。

同様に、あなたもこれらの治療を経験してしまうと、「鍼は分からない=鍼を理解しようとしてはいけない」ということに自ずと気付くのではないでしょうか。

「どうして?」なんてどうでもよくなってしまうこと。

それが先決ですよ。

関連項目:「だけど、どうして鍼で治るの?」 「わかりません!」

鍼灸師は、どうやって「鍼」というものを理解しているのですか?

全ての鍼灸師は例外なく「鍼」のことを心から不思議だと思っているはずです。
この世が三次元ならば、私の「鍼」に対するイメージは、四次元ですらない。
「四次元」を通り越して「五次元」の世界です。
現実には存在しない「五次元の世界」というものを、つい想像してしまうのです。

動物の鍼灸師の資格というものは存在するのですか?

存在しません。
しかし、動物の「鍼」は獣医師のみが行うことができます。

人間の鍼灸師は国家資格であり、国の指定を受けた専門学校を卒業してはじめて国家試験受験資格が得られます。
医師が、ヒトの西洋医学治療と鍼灸の両方が行えるのと同様に、獣医師は動物においてその両方の治療を行えるのです。

極論ですが、鍼灸に精通していなくても法的には医師(獣医師)であれば鍼灸を行ってよいということになります。
それは、自転車に乗れない人でも、普通自動車の運転免許があれば原付を運転できるのと似ています。
しかし「運転して良いこと」と「運転できること」は違います。

鍼が法的に行えることと、鍼で病気を治せるということの意味の違いも全く同じ道理ですから、是非努力された上「治せる鍼治療」を探してください。

鍼灸適応症を具体的に教えてください。

外科手術の適応疾患(例:骨折・腸閉塞など)以外は、ほとんどすべてと考えていただいて結構です。
それくらい広範囲に、鍼灸は劇的な効果をもたらします。あなたの思ってもみなかったような病気、例えば、床ずれや糖尿病なども鍼灸適応症です。

他に目安となる指標は、ステロイドが初期に著効する疾患や、原因治療が不可能な「○○症候群」といった病名の疾患が挙げられます。
また、鍼治療によりステロイドを無くせたり、減らしたり、さらには病気の完治といった光明を見出せることも少なくありません。

上記の例でいえば、免疫介在性溶血性貧血(IHA)、膠原病、関節リュウマチ、アトピー性皮膚炎、前部ブドウ膜炎(眼病)および耳血腫といった病気がそれに該当します。

ページの先頭へ