鍼灸治療について ~なぜ鍼灸なのか~

05「だけど、どうして鍼で治るの?」 「わかりません!」

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科学の進歩により、医学界においても、科学万能時代のなかで、西洋医学が隆盛を誇っているようです。
高性能のCTスキャン、MRIによる画像診断および最新の放射線照射装置による、ミリ単位のがん治療が、その最たる例です。

しかし、まだまだ原因のよく分からない病気がたくさんあり、近年では、大人になって悪化する重症型アトピー性皮膚炎など、難しい病気が増えています。
そして、これら病気の難病化・多様化は、同様に、動物にも言えることです。

一方で、鍼灸治療の有効性を、もっと科学的な側面から明らかにしようという試みが近年多くなされるようになりました。
一部では立証されているものもありますが、まだまだ、科学的には証明することが難しいことの方が多いと言わざるを得ません。

しかしながら、証明が不十分ではあるものの、現代医療において、著効する鍼灸治療が無限に存在するといっても過言ではないのです。

髪の毛ほどの太さの針を用いて、難病が完治する。
例えば、

・西洋医学を用いる医者がさじを投げた病気が克服した。
・当初は飲み続けなければいけないと考えていたステロイド薬を止めることができた。
・アトピー性皮膚炎あるいは癲癇(てんかん)が完治した。
・1年半もの間、完全な麻痺で歩けなかったわんちゃんが再び歩けるようになった。

等々、枚挙にいとまがありません。

上記の奇蹟は、めったに遭遇することがない、といった類のものではありません。
私自身も含めて、鍼灸を用いる治療家は、これらの奇蹟を日常的に数え切れないくらい経験しています。

では何故、鍼治療がこのような奇蹟を起こすのでしょうか?
疑問は尽きないように思えます。
そして、その答えが明確になり、全てを納得してからでないと鍼治療を受ける気がしない、
と考える人が数多く存在することも理解しています。

その上であえて申し上げますが、私は、その理由を説得し、納得してもらおうなどということを、ちっとも考えていません。
なぜなら、鍼灸理論とは、どんな説明を受けても到底理解できるものではないからです。

鍼灸治療を現在行っている私自身、かつて鍼灸治療のことを信じていませんでした。
もっと言えば、鍼灸のことは嫌いだったかもしれませんね(笑)。
私が「鍼」を嫌っていた理由は単純です。
「鍼」の信憑性なんて低いと考えていたし、そう考えていたがゆえに、自ら「鍼」を経験したことがなかったのです。
そんな「鍼」の食わず嫌いだった私が、今では大の「鍼」好きになってしまいました。

では、なぜ「鍼」のことが好きになれたのか。
それは、「鍼」の素晴らしさを「理解」するのではなく「体験」したからです。
「リンゴの酸いも甘いも、一度食べてみないと分かりません」とは私の恩師の言葉ですが、私は「鍼」の素晴らしさをもう味わってしまったのです。

「この説明を読み終えたら、鍼灸治療に対するより良い理解が得られるだろう」と考えていた方、 期待を裏切ってしまい申し訳ありません。
「理屈や理論ではなく、とにかく鍼の素晴らしさ・凄さを味わってみてください」
としか申し上げられないのです。
あなたの食わず嫌いが治ったとき、きっとわんちゃん・ねこちゃんの病気も治っていることでしょう

(2)
以下を読んでいただければ、もっともっと鍼を味わってみたくなるに違いありません。

これほど劇的に鍼治療が効くのはどうしてだろう、と考えてみます。こんなにも著効するのには、きっと、何かがあるはずだ、と。
しかしその「何か」の正体が分からない。

翻って考えてみれば、病気がよくなる仕組みに人知が及ばないからこそ、理論云々を超えて、わんちゃんやヒトを治癒に至らしめるのではないだろうか。
西洋医学のように理論的によく分かっていることは、理論に基づいた常識的な範囲内の効果しか表さない。
そんな風に私は考えます。

便秘症の方に、髪の毛ほどの太さの針を手首に刺せば、腸が動き出し、便秘が治る。
考えれば考えるほど不思議でなりません。
針を手首に刺したら、どうして腸に作用して、腸が動くのか。
あるいは、誰が、いつ、どうやってそんなことを発見したのか。
また、どうして針という道具だったのか。
考え出したらキリがありません。

便秘が、たった一本の針で治る。考えれば考えるほど不思議です。ですが、さらに考えてみてください。
確かに針を刺して動物や人間の病気が治るという作用も不思議ですが、針で病気が治る人体そのものの仕組みは、もっともっと不思議ではありませんか?

人類は、自分たちの体について、一体どのくらい知っているのでしょうか。
もしかしたら、「すでに解明した」とされることでも、解明したつもりになっているだけなのかもしれません。
その証拠に、人類はこの複雑な有機体である人間を、科学の力だけで生み出すこと、あるいは作り出すことができずにいるのです。
いや、人間どころか、未だに試験管の中でハエ一匹作り出すことすらできていない。
女性という素晴らしい存在の、妊娠・出産という尊厳的な行為を通してのみ、人間は誕生してくるのです。

ハエ一匹たりとも作り出せない人類。
そんな人類が、人体 -その不可思議なる有機体- に、なぜ鍼灸治療を施せば病気が治るのかを解明し尽くすまでには、まだまだ長い年月がかかると考えざるを得ません。
あくまでも私見ですが、鍼灸の全容解明には、最低でもあと10万年くらいは要するでしょう。人類がこの地球に生き残っていれば、の話ではありますが(笑)。

結論です。
逆説的ですが、「なぜ鍼が効くのか分からない」からこそ、鍼灸治療を選択していただきたい。
鍼治療は、科学的に分からなければ分からないほど、劇的な効果を表すのです。

鍼灸治療ざんまいの日々を通じて、鍼灸治療について私が理解できたこと。それは、
「本当にイヤになっちゃうくらい治る!」
ということです。

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